上海虹橋国際空港には市内とを結ぶ専用リムジンバスは夜間を除いて存在しないのだが、幾つかの一般路線バスが乗り入れている。
その中で比較的重要とも言えるのが、上海鉄道駅と上海虹橋国際空港を結ぶ941路のバスであろうか。
特に地下鉄が上海虹橋国際空港に乗り入れる前の時代はこの941路は結構重要な路線ではあったのだが、まあ今となっては上海虹橋国際空港と上海駅の2点間の移動だけであれば、地下鉄を乗り継いだ方は安くて時間も正確なのでそれほど重要な路線ではなくなった。
地下鉄なら4元40分ほどの距離である。
しかも上海虹橋国際空港の西側には、高速鉄道の乗り入れる上海虹橋駅がドッキングして開業したので鉄道へ乗り継ぐという意味でもほとんど意味がなくなったとも言える。
それ故に現在の941路の役割は、専ら上海鉄道駅や上海虹橋国際空港と、上海市内を結ぶ市民の足としての意味合いが強くなっている。
ただかつてほど重要な役割を持たなくなったとは言え、現在でも10~15分間隔程度で運行され、利用者はかなり多い。

そんな941路のバスは上海虹橋国際空港T2に隣接する東交通中心から出発する。
東交通中心のバス乗り場は、地上1階のレベルにあるのだが、同じく地上1階の空港の到着ターミナルからだと、ターミナル前の道路に遮られ平行することが出来ず、2階か地下1階への垂直移動を経て東交通中心に渡り、さらにまたエスカレーターやエレベーターでで1階レベルへの垂直移動が必要になる。
東交通中心には主に東西2室のバス待合室があるが、941路が出発するのは東側の第1待合室である。

東交通中心の第1待合室

その右端に有るのが941路の専用乗り場で、扉の電光掲示板で次に出発するバスの車体ナンバーと出発時間、残り時間などが表示されている。

941路バス乗り場の上部に出発情報の電光掲示板

バスは大型車体で、前後に扉のある2ドアタイプのもので、市内の通常のバスはワンマンで前乗り中降りが原則(かなり守られていないが)であるが、941路は料金徴収員員による運賃ルールのため、一応建前上は中乗り前降りとなっているようである。
ただ、空いている時はともかく混んでいる時は乗り方ルールの明示もないので、慣習的に前から乗る乗客も多い。

東交通中心941路バス乗り場は建物内部にありやや暗い

バス車体の外観は白を基調とした外装だが広告が掲載されている場合がほとんどで、日本同様に走る広告塔の役割を担っている。
逆に内部には、液晶モニターから放映される上海の交通機関専用の広告用テレビ放送以外は、ほとんど広告が無いのが上海のバスであり、まあ運賃が安い乗り物でなので広告のターゲットになるような客層はバスの中にはいないという判断なのかも知れない。
バスの定員は車体のタイプによって若干異なるが、今回の車両は座席数37、つり革20の57人乗りと計算される車両であり、これに運転士と料金徴収係りが加わる。

上海941路バスの椅子はプラスチック

941路の運賃は2~6元の段階制でとなっていて、乗車時に運賃聴取員に降車予定地を告げる必要があり、それに基づき運賃が決まる。
上海の公共交通カードも使え、他のバスや地下鉄に途中で乗り継げば1元の割引きが有る。

運賃徴収員専用の席が有る

941バスのルートはまず上海虹橋空港T2から北側に向かい、仙霞西路の地下トンネルを潜って滑走路の東側に出る。
ここには空港・航空関係者の多く住む新涇家苑(xin1jing1jia1yuan4)という住宅団地があり、バス停名は仙霞西路というものの、乗客には新涇家苑の名で通っている。
そして今度は滑走路の東側を南へ向かい上海虹橋国際空港の第一ターミナルというバス停に到着するが、ここから旅客ターミナルへ300米ほどあり、歩けない距離ではないもののターミナルのバス停を名乗るにはやや不親切とも言えるバス停になっている。
その後941路バスは上海動物園の前を通過し、休日ともなると周辺道路は大変混雑するので思わぬ渋滞が発生することもある。

941路バスからみた上海動物園

そして日本人の多く住むとされる古北(gubei)のカルフールそばを通過するが、実はここのバス停は上下線でかなり離れている。
まあここに限らない話ではあるが、上海のバス停は上下線でかなり離れている場合が多く、この「水城路虹橋路」のバス停も虹橋路を挟んで200m程離れているので、初めての人は苦労するだろう。

この辺りには日本人など外国人が多く住む

その後、ローカル住宅地が立ち並ぶ水城路をバスは突き進む。
上下2車線の道路のため渋滞しやすく、ちょくちょく中国人の電動バイクや歩行者が道を横切るので、ここではバスは比較的ゆっくり進む。
沿線に市場などもあり、中国のローカル生活の実態を見る上では貴重なルートであり、実は日本人向けの飲食店なども多いエリアとなっている。

以前に比べかなりきれいになった市場

そして高級住宅の立ち並ぶ天山路という大通りに出てバスは再び東に向かうことになる。
この天山路の地下には地下鉄2号線の上を走る通りに出て、近年商業地が増えた婁山関路駅付近を通過する。
日系企業のオフィスが立ち並ぶ虹橋開発区に近く、最寄駅ともなっているため、駅前には日本料理店なども少なくない。

婁山関路駅前には日本人向けのお店やマンションもある。

そして上海の環七とも言うべき中山西路を経て中山公園エリアに達する。
中山公園は上海の渋谷とも言われるようになっており、渋谷ほどの商業集積はまだないが、聳え立つ龍之夢ショッピングセンターを中心に幾つかの商業施設が集まっていて、人が多く集まり道路も歩道も混雑している。
この婁山関路も中山公園も地下に地下鉄2号線の駅があるため上海虹橋国際空港からだと地下鉄のほうが圧倒的に早く着くが、こういった地上の風景を眺めながら観光気分で移動できるのもバスならではの光景と言える。

上海中山公園龍之夢ショッピングセンター

ここから941路バスは長寿路という通りを経て、上海鉄道駅まで向かうが、この沿線は高層住宅とその周辺の小型飲食店や中規模のショッピングセンター、或いは歓楽施設などが混在するエリアとなっており、ややごちゃごちゃした印象となっている。
そして蘇州河の橋を渡ると上海駅であり、941路は上海駅南広場の西側の端っこに到着する。

上海駅南広場の941路バス停

鉄道駅の入り口からやや遠いのは仕方ないにしろ、バス停付近は歩行者用通路と車道が入り乱れており、乗降の直前直後はバスやタクシーに轢かれない様に是非気をつけたい。
この941路ばすは全行程を乗り通すと、80分ほどかかる。
早朝夜間の空いている時ならば、50分ほどで走りぬけてしまうこともあるが、上述のように幾つもの繁華街を抜けてくるので、朝晩のラッシュ時などは90分ほどかかることを想定したほうが無難であり、急ぐならやはり地下鉄をお勧めする。
しかし時間を問わないというならこの941路バスは上海の色んなタイプの街を眺めるには都合よく、かなり安上がりな「観光バス」とも言えそうである。

上海鉄道駅南広場

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